教員へのインタビュー身近な経験が、社会課題解決の糸口に。 世界で活躍する田村先生が語る “メカニズムデザイン”の魅力とは?

関西学院大学経済学部専任講師 田村 翔平

関西学院大学経済学部の専任講師。
2017年3月東北大学大学院経済学研究科
博士後期課程修了。博士(経済学)。
2017年4月より現職。
専門は経済学を制度設計・ルールづくりに応用するメカニズムデザイン。
「市場と制度の経済学」などの授業を担当。
「早く志望する学部を決めなくちゃ」と焦っていませんか?
「大学の学問にイメージが湧きにくい高校生が、学部を決められないのは当たり前です。」そう話してくれたのは、経済学の中の”メカニズムデザイン”という分野で研究を続け、社会に貢献し続けている関西学院大学経済学部の田村翔平先生。
田村先生いわく、経済学の道を志したのは大学に進学してから。なんとなく入学した経済学部のとある授業を受けてから、大きく関心を持つようになったそう。
そんな田村先生は、世界で最先端の研究を続ける教員たちから色々なことを広く学べることが関西学院大学経済学部の一番の強みであると話します。

世界中で大活躍。メカニズムデザインとは?

田村先生は、経済学の”メカニズムデザインという分野の研究を行っているのですよね。

あまり聞き慣れない言葉なのですが、具体的にはどんな分野なんでしょうか?

簡単に言えば、何か決め事をするときに、全体にとって望ましい選択ができるようなルール作りに関する分野です。具体的には、人々の間で物を配ったり、人同士をマッチングさせたりするようなときに使える制度の設計を研究します。

人によってどのような好みがあるのかわからないような状況でも、全体にとって望ましい選択が実現できるようにしたい。

そのためにはどのように制度を設計すればいいのか、探究する分野ですね。

人によって好みが違ったり重なったり、また人が増えれば増えるほど決めるのは難しいですよね。日常生活でとても役に立ちそうです。
社会課題の解決にも繋がるのでしょうか?

もちろんです。たくさんあるんですよ。これまでですと、たとえばアメリカなどの先進国で行われているような電波(周波数)の割り当てに、メカニズムデザインが関わっています。

アメリカなどの多くの先進国では、携帯電話会社などの電波を使って事業を行いたい企業たちに対し、政府はオークションを使って電波を割り当てます。そのときの制度設計にメカニズムデザインの知見が大きく活用されているんです。

誰もがスマホで大容量のデータをやり取りする今の社会において、携帯電話会社は事業を行うために多くの電波を必要とします。そのため、元々限りのある電波は今や社会にとって希少な資源の一つであり、その配分はとても重要となっています。

オークションを用いた電波の割当は1994年にアメリカで初めて実施されたのですが、それまでは主に管轄当局による審査で電波の割当が決定されていました。この方法では、通信技術が高度になるにつれて審査が難しくなること、審査の透明性が確保しづらいこと、資源の収益化に繋がらないことなどが課題となっていたのですが、オークションではこれらの課題が解決できることが期待できます。

1994年にアメリカで実施された初めてのオークションでは経済学者が実際に設計に携わったルールが導入され、初回のオークションでは6億ドル以上の収益が計上されました(2020年のノーベル経済学賞ではこのオークションの設計に大きく貢献した研究者たちに賞が授与されました)。
その後、いくつもの改良や他国での導入を経て、現在までに多くの電波がオークションを通じて割り当てられています。

日本では現時点でオークションによる電波の割当は実施されておらず、総務省が審査を行って割当を決定していますが、実はこの数年でオークション導入に関する議論が急速に発展していて、今後も目が話せないですね。

他にも、これは日本も当てはまる例ですが、医学部を卒業して研修医になる人たち研修医を受け入れる病院をマッチングする際の制度設計や、保育園に入りたい児童たち児童たちを受け入れる保育園をマッチングする際の制度設計に関わっている研究者たちもいます。

様々なところで活用されているのですね。

そうですね。制度や仕組みが確立していなかったり、あるいは既存の仕組みが問題点を持っていたりするような分野で特に活用が期待できます。

とても需要のある分野ですね。
田村先生自身は、どのような研究をしているのでしょうか。

私は集団やコミュニティの意思決定に大きな関心を持っているので、それらに関する研究を主に行っています。

うーーん。みんなの意見を聞いてみるとか、候補の人を分析して考えるとか、ですかね?でも、それが最適な方法か分からないです。

うんうん。難しいですよね。

私は、各個人の選ばれたい・選ばれたくないという思惑が投票に反映されず、真にふさわしい人が選ばれるような仕組みは設計できるのかどうかについて研究しています。これまででは、既存の研究で指摘されている問題点を解決できるような仕組みを具体的に設計して、さらにその仕組みが他の仕組みと比べてある種の優位性があることを数学的に証明したりしています。これらの成果はメカニズムデザインでも評価の高い国際的な学術雑誌に論文の形で公表することができました。

他にも、兄弟の間で遺産を分配するときや、地域間で発電所をどこに置くべきかというような状況で、公平で望ましい結果を得られるようにするにはどのように制度を設計したらいいのかということなども研究しています。

どれも、ある種で限界があるところですよね。全員が納得することは難しいということを理論的に示すような仕組み作りと言えますね。

鋭いですね。まさにそのとおりです。メカニズムデザインでは、できること・できないことを数学を使ってハッキリと証明することができます。この点もこの分野の魅力ですね。

最近では、町内会や自治会の機能維持や活性化にも関心を持っていて、
行政が主催する勉強会に参加したり、実際に地域の方にお話しを伺ったりしています。これらの分野で自分が研究を通じて何ができるのかを探っている状況ですね。

向上心もすごいですね!必要としているところは必ずあると思います!これからの活躍が楽しみです。

大学時代の経験が、面白いアイデアや授業を生む

そもそも、どうして田村先生はメカニズムデザインという分野に関心を持ち始めたのでしょうか?
何かエピソードがあれば教えていただきたいです。

私は大学生のとき、サークルで代表を務めていたんですが、その時の経験が大きく影響していると思います。

私の所属していたサークルは、とても人数が多くて、活発なサークルだったんです。そのため、日々多くのことを話し合って決定しなければならなかった。そのときにうまくいったり、うまくいかなかったり、色々な経験をしました。

例えば、私が幹部を引退するとき、次の幹部を決めるときの投票を行ったことがあるんです。これは、サークル内みんなで投票して決めるものでした。

その時、どのように集計して、決定するのかという投票のルールは、自分たちで考えたんです。しかし、一部のサークルのメンバーから、本当にそれでよかったのかな?っていう声があった。

私なりに一生懸命考えた結果だったのですが、たしかにその意見も一理あるなあと納得したんです。とは言っても、みんなが納得するような投票を作ることは難しいです。

そんな実体験を通して、意思決定に関心が生まれました。

かなり実体験に基づいた関心だったんですね。
この経験は、今の大学生も悩んでいる人が多そうです。

田村先生が行う授業も、このようなことをテーマにしているのでしょうか?

そうですね。
私は市場と制度の経済学という講義を担当しています。

『メカニズムデザイン』の中でも特に理解のしやすいオークションとマッチングに対象を絞って、どのような制度設計ができたり、課題が解決できるのかを教えています。

この講義では受講生に最後にレポートを書いてもらうのですが、
自分自身のアイデアで、どのような問題に対してどのように解決ができるのかを考えてもらうんです。
どのように制度を作って、解決に導いていくのかを具体的にレポートに執筆してもらいます。毎年面白いアイデアのレポートが上がってくるので、採点していてとても楽しいです。
講義中の田村先生

とても面白い講義ですね!

田村先生のゼミでも同じようなことが行われているのでしょうか?

ゼミでは、まず関心の近い人たち(労働問題、環境問題、地方創生とか)でグループを組んでもらいます。そして、実際に自分たちが制度設計で課題解決に取り組むことを念頭に置きながらグループで研究を行ってもらうんです。

将来自分たちがそういった分野に関わることを想定した、とても実践的な授業ですね!とても面白そうです。

大学は、広く学んで自分の興味を見つける場所

田村先生が経済学を専攻したきっかけがあれば教えてください!

実は、それほど大きな思いがあって経済学部を選んだわけではないんです。

強いて言うならなんとなく就職に強そうだったってくらいですかね。

行きたい大学が先にあって、後に学部を選んだので、正直学部はどこでもよかったんですよ。そんな曖昧な動機で経済学部に進みました。

そうだったんですか!意外です。その状態からどうして先生になるほど経済学の世界にハマっていったんですか?

大学へ進学してから面白い授業がたくさんあって、徐々に興味を持ち始めたんです。

特にミクロ経済学という授業のおかげですね。中古品市場を分析する授業の回があったんですけど、その時にちょうどリサイクルショップでアルバイトをしていたんです。勤務中に実感することが理論的に説明できることを面白いと感じました。

それからは、学部生でありながら大学院の授業に参加するなど、自ら進んで経済学を勉強していました。

やっていく中でハマって行くような感じですよね。僕もそういった経験あります!よくありますよね。

うんうん。そうですよね。
大学の学問は高校生の時に触れないものが多いから、イメージが湧きにくいと思います。

だからこそ、どの学部に進もうと悩んでいる高校生も多いと思います。

だけど実際に進んで見ると、どの学部に行っても必ず興味のあるトピックが見つかると思うんですよ。

それが大学の良さですかね。

大学は幅広い分野を自由に学べて楽しいですよね。
最後に、受験生に向けて関西学院大学経済学部をおすすめする理由を教えてください。

とても広い分野の教員が集まっているところですね。
私が授業しているメカニズムデザインも、日本の大学では数える程度しか授業が行われていないですが、メカニズムデザインに限らず、関西学院大学経済学部では様々な学生の関心に沿う多くの授業が開講されています。

さらに、授業を行っている教員たちは国際的な学術雑誌に論文を掲載しているような研究の最前線で活躍している人たちが、たくさんいるんです。

そんな教員たちが学生一人ひとりに寄り添って授業を行ったり、関わったりする環境が整っているのは、大きな強みだと思います。
今、なんとなく経済学部に進学しようと考えている高校生はたくさんいると思います。
現時点で関心を持って入ってくるのはとても素晴らしいと思います。
しかし、もし現時点で関心がなくても大丈夫。
私の例のように、実際に入ってみてから自分の関心に刺さるような授業や分野が必ずあると信じているので、ぜひ関西学院大学経済学部に来て頂けたらなと思います!
講義中の田村先生

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関西学院大学経済学部の専任講師である、田村翔平先生。
田村先生が学生に寄り添いながら楽しく実践的な講義をしているのは、田村先生自身が学生時代に様々な経験をしたから。
その経験は今もなお生かされ、様々な社会課題の解決に貢献しています。
高校生のみなさんは、大学の学問にどんなイメージを持っていますか?
「難しそう。」「面白くなさそう。」そう思ってしまうのも仕方ありません。高校生のうちはイメージが湧かないのも当然です。
だからこそ、今はまだ興味のあることややりたいことが決まってなくても大丈夫。色々なことを学んでいくうちに、必ず関心がある分野が見つかるはずだから。
それがきっと誰かを救うことに繋がりますよ。